
20代前半で、半数は上がる。
残りの半数は上がらない。
転職で年収が
上がった人・
下がった人
データで見る分かれ目
運ではなく、
移る先で決まっています。
転職すれば年収が上がる、という話も、転職は博打だ、という話も、どちらも半分だけ当たっています。
厚生労働省の調査を見ると、上がった人と上がらなかった人がほぼ半々に分かれています。そして、その分かれ方には規則性があります。
この記事では、分かれ目になっている条件を3つに絞って説明します。自分がどちら側に入りそうかは、動く前に見積もれます。
目次
上がった人は20代前半で半数
厚生労働省の雇用動向調査に、転職して入職した人の賃金がどう変わったかが載っています。前職と比べた変化です。
出典:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概況」表6(転職入職者の賃金変動状況)。前職の賃金と比べて「増加」した転職入職者の割合。
20〜24歳で50.5%、25〜29歳で46.3%。全体の40.5%より高く、若いほうが上がりやすい傾向がはっきり出ています。
理由はいくつかあります。前職の金額が低いので上がる余地が大きいこと、若い人を採るための初任給の引き上げが続いていること、年齢による賃金カーブの立ち上がり部分にいること。
ただし裏を返せば、20〜24歳でも約半数は増えていません。25〜29歳では半数を超えます。転職すれば上がる、という前提は成り立たないということです。
「増えた」のうち、どれくらい増えたのか
同じ調査には、増えた幅の内訳も出ています。
| 年齢 | 増加した | うち1割以上増加 |
|---|---|---|
| 20〜24歳 | 50.5% | 38.5% |
| 25〜29歳 | 46.3% | 37.9% |
| 全体 | 40.5% | — |
出典:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概況」表6。「1割以上増加」は増加した人のうちの内訳ではなく、転職入職者全体に対する割合。
20〜24歳で増加した50.5%のうち、1割以上増えた人が38.5%。つまり増えた人の大半は、1割以上という大きめの変化をしています。
少しだけ増える、という転職は意外に少ない。これは理にかなっています。わずかな上昇のために転職する人は少なく、動くときは条件が大きく変わる場所に移るからです。
年収400万円の人が1割増えれば40万円です。逆に、下がる側に入ったときも同じ幅で動く可能性があります。振れ幅の大きい選択だということは、先に理解しておく必要があります。
分かれ目1:移る先の企業規模
ここから、何が上がる側と下がる側を分けているかを見ます。いちばん効くのが規模です。
賃金構造基本統計調査で25〜29歳の賃金を見ると、大企業30.2万円、中企業27.1万円、小企業25.8万円。大企業と小企業で月4.4万円の差があります。
出典:厚生労働省「令和7(2025)年 賃金構造基本統計調査の概況」第4表。男女計の所定内給与額。大企業301.7千円、中企業270.6千円、小企業258.2千円。
小企業から中企業へ、中企業から大企業へ移れば、平均としては上がります。逆方向なら下がります。これは本人の交渉力とは関係のない、構造的な差です。
2025年はこの差がさらに広がりました。大企業の賃金が前年比5.7%増に対して、中企業は1.0%増、小企業は2.1%増。大企業を100としたときの格差は、中企業が88.6から84.7へ、小企業が82.1から79.4へ下がっています。
つまりいまは規模を上げる移動のほうが、以前より効果が大きい局面にあります。
分かれ目2:移る先の産業
規模よりさらに差が大きいのが産業です。
産業別の賃金は、最も高い電気・ガス・熱供給・水道業が44.4万円、学術研究・専門技術サービス業が44.0万円、金融業・保険業が43.7万円、情報通信業が40.6万円。最も低い宿泊業・飲食サービス業は27.7万円で、上との差は16.7万円になります。産業計は34.1万円です。
出典:厚生労働省「令和7(2025)年 賃金構造基本統計調査の概況」第5-1表・第5-2表。一般労働者の所定内給与額・男女計。
16.7万円の差は、規模の差(年齢計で7.9万円)の2倍以上です。産業を変えるほうが、動く金額は大きくなります。
ここで注意したいのは、産業の平均に自分が乗るわけではないことです。水準の高い産業に未経験で入る場合、スタートはその産業の下の層になります。1年目で平均に届くことはありません。
だから、短期で上がりたいなら職種を残して産業を変えるのがいちばん確実です。経験が評価されたまま水準だけが変わるので、入った時点から差が出ます。職種と産業を同時に変えると、未経験として扱われて下がる側に入りやすくなります。
分かれ目3:勤続0年に戻ることを計算に入れたか
見落とされやすいのがこれです。転職すると、勤続年数がリセットされます。
賃金構造基本統計調査の勤続年数別の数字を見ると、勤続0年が27.5万円、1〜2年が28.5万円、3〜4年が29.7万円、5〜9年が31.3万円。
出典:厚生労働省「令和7(2025)年 賃金構造基本統計調査の概況」第7表。一般労働者・男女計・企業規模計の所定内給与額。
いま勤続4年で29.7万円あたりにいる人が、同じ規模・同じ産業の会社に移ると、勤続0年の27.5万円の層に戻ります。差は2.2万円。
この目減りを埋めるには、移る先の水準が今より高い必要があります。規模も産業も変わらない転職は、金額では下がりやすいのはこのためです。
人間関係や労働時間が理由の転職では、ここを計算に入れておかないと「条件は改善したのに手取りが減った」という形になります。それが分かっていて選ぶなら問題ありませんが、知らずに動くと後から不満が残ります。
※賞与の扱いも確認が必要です。入社初年度は賞与が満額支給されない会社が多いので、年収ベースでは初年度だけ大きく下がることがあります。
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下がる前提で動くのが合理的な場合
年収が下がる転職が、必ず失敗というわけではありません。合理的なケースを挙げます。
- 残業代で金額を作っていた職場から、残業の少ない職場に移る場合
- いまの産業が縮小していて、数年後の選択肢が狭くなると判断した場合
- 次に移るための経験を取りに行く、中継ぎの転職の場合
- 健康や生活の維持が、金額より優先される場合
- 未経験の職種に入って、3年で水準を取り戻す見込みが立つ場合
1番目はよくあるパターンです。残業代が月5万円入っていた人が、残業ゼロの職場に移れば総額は下がります。時間単価では上がっているのに、年収では下がる。この区別をしないまま比較すると判断を誤ります。
5番目を選ぶなら、何年で戻る見込みなのかを数字で確認してから動いたほうがいいです。年齢階級別の賃金で見ると20〜24歳が24.3万円、25〜29歳が27.9万円、30〜34歳が31.2万円。戻すための時間は、20代のうちのほうが取りやすいという関係にあります。
出典:厚生労働省「令和7(2025)年 賃金構造基本統計調査の概況」第2表。一般労働者・男女計。
よくある質問
Q. 自分が上がる側に入るか、動く前に分かりますか
3つの分かれ目で見積もれます。移る先の規模が今より大きいか、産業の水準が今より高いか、勤続年数のリセット分(2万円前後)を超える上昇があるか。3つのうち2つ当てはまれば、上がる側に入る可能性は高くなります。
Q. 提示された年収が今より高ければ、それで安心ですか
内訳を確認してください。固定残業代が含まれていないか、賞与が見込み額で入っていないか。この2つで実態が変わります。月の総支給と賞与の実績額を分けて比べると、正確に判断できます。
Q. 20代のうちに何回も転職すると、下がる側に入りやすくなりますか
回数そのものより、そのたびに勤続0年に戻ることの影響が大きくなります。勤続3〜4年で29.7万円まで積んでから動くのと、1年ごとに動くのでは、積み上がり方が変わります。動く間隔は意識しておきたい部分です。
Q. いまの年収が低すぎる気がします。何と比べればいいですか
同じ年齢・同じ企業規模・同じ産業の3つを揃えて比べてください。25〜29歳で小企業なら25.8万円が目安です。これを下回っているなら会社の配分の問題で、転職で変わる可能性が高くなります。平均どおりなら、規模や産業を変えないと動きません。


