
「スキル不足」は、
だいたい自己評価のズレ。
20代の市場価値は
どう決まる?
評価される4つの軸を
データで見る
ふわっとした言葉を、
統計の数字に置き換えます。
「自分には市場価値がない」と言う20代は多いのですが、何をもってそう判断したのかを聞くと、たいてい答えが出てきません。
市場価値という言葉は便利すぎて、実体がないまま使われています。実際に給与を決めているのはもっと機械的な要素で、そのほとんどが本人の努力の外側にあるのが実情です。
この記事では、公的統計で確認できる4つの軸に分解します。自分がどの軸で損をしているのかが分かると、やることが決まります。
目次
軸1:年齢。20代のあいだに賃金はどう動くか
厚生労働省の賃金構造基本統計調査で、年齢階級別の賃金を見てみます。一般労働者の所定内給与、男女計の数字です。
20〜24歳が24.3万円、25〜29歳が27.9万円、30〜34歳が31.2万円。20〜24歳を100とすると、25〜29歳で115.1、30〜34歳で128.6になります。
出典:厚生労働省「令和7(2025)年 賃金構造基本統計調査の概況」第2表(性、年齢階級別賃金)。20〜24歳242.8千円、25〜29歳279.4千円、30〜34歳312.3千円、年齢計340.6千円。
5年で約15%、10年で約29%。これは同じ人が昇給していく額ではなく、その年齢層の平均なので、転職して水準が上がった人も含まれています。
ここで押さえておきたいのは、年齢だけで水準が上がる期間は20代で終わるということです。男性では55〜59歳の44.6万円がピークで、20〜24歳の181.4に達します。ただし伸び方は30代後半から鈍り、40代以降は役職の有無で分かれていきます。年齢で自動的に評価される時間は、思っているより短いです。
軸2:勤続年数。積んだ年数は数字に出る
同じ会社で何年働いたかによる差も、はっきり数字に出ます。
出典:厚生労働省「令和7(2025)年 賃金構造基本統計調査の概況」第7表(勤続年数階級、性、企業規模別賃金)。一般労働者・男女計・企業規模計。単位は万円(千円単位の数値を四捨五入)。
勤続0年が27.5万円、3〜4年で29.7万円、5〜9年で31.3万円。0年から5〜9年までで約14%上がります。
この「勤続0年」には、入社したばかりの新卒と、転職してきた人の両方が入っています。つまり転職した直後は、いったんこの層に入るということです。経験を持ち込んで前職より高い金額で入る人もいますが、平均としてはこの位置から始まります。
だから勤続年数は、短すぎると不利に働きます。ただし長ければ長いほどいいわけでもなく、大企業では勤続3〜4年で31.9万円、5〜9年で33.7万円と水準自体が違うので、どこで積むかとセットで効いてきます。
軸3:どの産業・どの規模にいるか
同じ年齢・同じ職種でも、ここで大きく変わります。企業規模別に25〜29歳の賃金を見ると、こうなります。
| 企業規模 | 25〜29歳の賃金 | 大企業=100 |
|---|---|---|
| 大企業 | 30.2万円 | 100.0 |
| 中企業 | 27.1万円 | 89.7 |
| 小企業 | 25.8万円 | 85.6 |
出典:厚生労働省「令和7(2025)年 賃金構造基本統計調査の概況」第4表(企業規模、性、年齢階級別賃金)。男女計。25〜29歳は大企業301.7千円、中企業270.6千円、小企業258.2千円。企業規模間賃金格差は年齢計の数値ではなく25〜29歳の値。
同じ25〜29歳で、大企業と小企業の差は月4.4万円。年に直すと50万円以上です。
産業の差はもっと大きく、最も高い電気・ガス・熱供給・水道業が44.4万円、最も低い宿泊業・飲食サービス業が27.7万円。全年齢の平均なので20代の実額とは違いますが、水準の位置関係を見る物差しにはなります。
この軸がいちばん重要なのは、本人の働き方では動かせないという点です。同じ仕事を同じ質でやっても、原資が小さい場所にいれば金額は上がりません。だから転職で解決しやすい軸でもあります。
軸4:役割を持っているか
役職の有無による差も載っています。係長級が39.9万円、課長級が52.9万円、部長級が63.6万円です。
出典:厚生労働省「令和7(2025)年 賃金構造基本統計調査の概況」(8)役職別にみた賃金。雇用期間の定めのない一般労働者・男女計。
20代で係長級に届く人はまだ少数ですが、ここで見てほしいのは金額そのものではありません。役割を持った時点で水準が別の段に乗るという構造です。
転職の選考でも、同じことが起きています。人を動かした経験、裁量を持って決めた経験があると、評価の枠が変わります。肩書きがなくても「後輩2人の指導を任されていた」「発注先の選定を自分で決めていた」は、この軸に乗る材料です。
20代のうちにこの経験を取りに行けるかどうかは、会社の規模や人の構成に左右されます。人が足りない職場のほうが早く任されるという、皮肉な関係もあります。
4つの軸で、自分の位置を確かめる手順
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手順 1自分の年齢階級の平均と、自分の額を比べる
20〜24歳なら24.3万円、25〜29歳なら27.9万円が目安です。所定内給与、つまり残業代とボーナスを除いた月額で比べてください。ここで下回っているなら、残りの3軸のどこかに原因があります。
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手順 2勤続年数で説明がつくか見る
勤続1年なら、平均を下回るのは当然です。3〜4年を超えているのに平均より低いなら、年数では説明がつきません。
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手順 3産業と規模で説明がつくか見る
小企業なら大企業比85.6、宿泊・飲食なら産業計より6.4万円下。この2つを足すと、平均より低い理由はほぼ説明できてしまうことがあります。説明がついた場合、それは本人の問題ではありません。
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手順 4どれも当てはまらないなら、評価のされ方を疑う
年数も規模も産業も平均的なのに金額が低い場合、その会社の配分の問題です。これは社内では動かしにくいので、外の水準を聞くのが早道になります。
4つのうち、転職で変えられるのは3番と、結果的に4番です。1番と2番は時間が解決します。自分の不満がどの番号なのかを先に決めておくと、動くべきかどうかの判断が早くなります。
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「スキル不足」と感じるときに起きていること
4つの軸を並べて気づくのは、どれも「スキル」という言葉で測っていないことです。
年齢、勤続年数、産業、規模、役割。この5つで賃金の水準はかなり説明できてしまいます。本人の技能の差が入る余地は、思っているより小さいです。
それでも「自分はスキルが足りない」と感じるのはなぜか。社内でいちばん下の層にいる状態が長く続くと、比較の相手が社内の先輩しかいなくなるからです。社内では下から数えたほうが早い人が、社外では平均より上になっていることは、実際によくあります。
学歴別の数字も参考になります。25〜29歳で高校卒が25.2万円、大学卒が29.6万円。4.4万円の差ですが、これも本人の能力差ではなく、入れる会社の分布が違うことによる差です。
出典:厚生労働省「令和7(2025)年 賃金構造基本統計調査の概況」第3表(学歴、性、年齢階級別賃金)。25〜29歳は高校251.7千円、大学296.4千円。
よくある質問
Q. 資格を取れば市場価値は上がりますか
職種によります。資格が業務の前提になっている分野では効きますが、そうでない分野では、取得した資格より担当した業務の内容が見られます。4つの軸のどれにも資格は入っていないので、優先順位としては後ろです。先に産業と規模の軸を確認したほうが、動く金額は大きくなります。
Q. いまの平均より低いと分かりました。すぐ転職すべきですか
理由が3番(産業・規模)なら、転職で変わる可能性が高い部分です。理由が2番(勤続年数が短い)なら、いま動くと勤続0年に戻るので慎重に考えたほうがいいです。平均より低いという事実だけでは、動くべきかは決まりません。
Q. 経験1年で「市場価値がない」と言われました
1年だと紹介できる求人が未経験枠に寄るのは事実です。ただ、それは価値がないのではなく、まだ年数の軸が立ち上がっていないだけです。賃金構造基本統計調査でも勤続0年と1〜2年の差は約1万円で、ここはどの産業でも小さい。あと2年で3〜4年の層に入り、評価のされ方が変わります。
Q. 自分の評価額を自分で調べる方法はありますか
統計の平均と比べるところまでは自分でできますが、「自分の経験がどの求人でいくらになるか」は求人を持っている側しか知りません。年収のレンジを聞くだけなら、転職を決めていなくても聞けます。手順4に当たっている人は、ここを一度通すと判断がはっきりします。



