
給料3.8%増、物価2.2%増。
差し引き1.5%。
物価は上がったのに
給料は?
実質賃金データで
見る20代の現実
手取りが増えた感じがしないのは、
気のせいではありません。
昇給した。ニュースでも賃上げと言っている。それなのに、月末の口座の残り方がほとんど変わらない。
この感覚にはちゃんと裏付けがあります。名目の金額と、買えるものの量は別の数字で動いているからです。
この記事では、国が毎月出している数字でそのズレを確認します。そのうえで、20代の賃金がいまどういう位置にあるのかを見ていきます。
目次
名目は3.8%増、物価は2.2%上昇
厚生労働省の毎月勤労統計調査が、最新の数字を出しています。事業所規模5人以上、就業形態計の数字です。
現金給与総額は31万1364円で、前年同月比3.8%増。このうち基本給にあたる所定内給与は27万7861円で、同じく3.8%増でした。3%以上の伸びが7か月続くのは34年5か月ぶりだとされています。
出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年8月分結果速報」2026年10月7日公表。事業所規模5人以上、就業形態計。速報値は確報で改訂される場合があります。
金額としては、たしかに上がっています。ここだけ見れば悪い話ではありません。
同じ資料に、物価の数字も参考として載っています。消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の前年同月比が2.2%上昇。総合では2.0%上昇でした。
給料が3.8%増えて、物の値段が2.2%上がった。この2つを並べると、増えた分のうち半分以上が値上がりで消えていることになります。
差し引きの実質賃金は、プラスに戻っている
名目の賃金を物価で割って、買えるものの量に直したのが実質賃金です。
1.5%増
8か月連続のプラス。総合CPIで実質化すると1.9%増で9か月連続。
出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年8月分結果速報」。実質賃金指数(2020年平均=100)は83.7。持家の帰属家賃を除く総合の消費者物価指数で実質化した値。
プラス1.5%。8か月続けてプラスになっています。つまり、いまは買えるものの量が少しずつ増えている局面です。
少し前の状況とは変わっています。名目は上がっているのに物価の上がり方が速くて実質がマイナス、という期間が長く続いていました。そこは抜けました。
ただ、1.5%というのは月の手取りが20万円の人なら3000円ぶんです。生活が変わったと感じる大きさではありません。数字としてはプラスでも、体感としてはほぼ横ばい。この落差が「上がったはずなのに楽にならない」の正体です。
※実質賃金は、どの消費者物価指数を使うかで数値が変わります。同じ速報でも1.5%と1.9%の2つが載っています。ニュースで数字が食い違って見えるのはこのためです。
20代の賃金は、全体より速く上がっている
年齢別に見ると、少し景色が変わります。賃金構造基本統計調査で、年齢階級ごとの前年からの伸び率を並べました。
出典:厚生労働省「令和7(2025)年 賃金構造基本統計調査の概況」第2表(性、年齢階級別賃金、対前年増減率)。一般労働者の所定内給与額・男女計。
25〜29歳が4.6%、20〜24歳が4.4%。全体の3.1%より1.5ポイントほど高く伸びています。35〜39歳の3.6%と比べても、20代のほうが速い。
理由は単純で、人が採れないからです。若い人を採るための初任給の引き上げが続いていて、その効果が20代の層に先に出ています。
ここは20代にとって有利な材料です。市場の水準そのものが上がっている時期なので、いまの会社の昇給がその速度に追いついていないなら、差は毎年開いていきます。
それでも楽にならない3つの理由
理由 1
上がり方が平均の話で、全員ではない
4.6%というのは25〜29歳の平均です。初任給を上げた会社と、据え置きの会社の両方が混ざっています。据え置き側にいる人は、物価の2.2%だけを受けて実質ではマイナスになります。
理由 2
体感に効く品目の値上がりが、平均より大きい
消費者物価指数は全体の平均です。食料や日用品のように毎週買うものが上がると、平均が2.2%でも生活の実感はそれより重くなります。逆に、買う頻度の低い品目が下がっていても体感には乗りません。
理由 3
社会保険料と税が増えた分は賃金に出てこない
毎月勤労統計の現金給与総額は、所得税や社会保険料を差し引く前の金額です。総支給が3.8%増えても、控除が増えれば手取りの伸びはそれより小さくなります。明細の「総支給」と「差引支給」を並べて1年前と比べると、ここは自分で確認できます。
3つのうち、自分で動かせるのは1番です。平均が上がっている時期に据え置き側にいるかどうかは、確認すれば分かります。
この局面で20代が取れる選択
-
1自分の昇給率を、4.6%と比べる
去年の基本給と今年の基本給を割るだけです。4%台に届いていれば市場並み。2%台なら、市場の水準から毎年2ポイントぶん置いていかれている計算になります。1%未満や据え置きなら、実質ではマイナスです。
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2昇給の仕組みを確認する
定期昇給があるのか、業績次第なのか、ベースアップがあったのか。就業規則か賃金規程に書いてあります。仕組みとして上がらない作りになっている場合、来年も同じです。
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3いまの経験の外の評価額を聞く
社内の水準だけで判断すると、市場が動いていることに気づけません。求人を扱っているところに年収のレンジを聞くと、2つの数字が並びます。
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4急ぐかどうかを、求人の量で判断する
有効求人倍率は1.18倍ですが、新規求人数は前年同月比0.8%減。増え続ける前提ではなくなっています。動くなら、量に余裕があるうちに情報を集めるほうが安全側です。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」2026年8月28日公表。有効求人倍率は季節調整値、新規求人数は原数値の前年同月比。
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転職で賃金が上がった人の割合
では、動いた人はどうなっているか。厚生労働省の雇用動向調査に、転職して入職した人の賃金の変化が載っています。
賃金が「増加した」人は全体で40.5%。年齢別では20〜24歳が50.5%、25〜29歳が46.3%でした。1割以上増えた人に絞ると、20〜24歳で38.5%、25〜29歳で37.9%です。
出典:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概況」表6(転職入職者の賃金変動状況)。
20〜24歳では半数が増加側に入っています。一方で、増えなかった人や減った人も半数近くいるということでもあります。転職すれば上がるのではなく、上がる側と下がる側に分かれるのが実際のところです。
分かれ目になるのは、移る先の産業と企業規模です。原資が小さい場所から小さい場所に移っても、金額は動きません。
よくある質問
Q. 実質賃金がプラスなら、もう待てばいいですか
全体としてはプラスですが、それは平均の話です。自分の昇給が物価の2.2%を下回っているなら、個人としてはマイナスのままです。全体がプラスかどうかではなく、自分の数字と比べてください。
Q. 昇給が2%台でした。転職するべきでしょうか
それだけでは決まりません。2%台でも、産業と企業規模の水準が高い場所にいるなら、絶対額では上の位置にいる可能性があります。伸び率と水準の両方を見る必要があります。
Q. ニュースの実質賃金の数字が記事によって違います
どの消費者物価指数で実質化したかの違いです。持家の帰属家賃を除く総合なら1.5%増、総合なら1.9%増。同じ速報に両方が載っています。比べるときは、同じ指標どうしで比べてください。
Q. 物価が上がっているうちは転職しないほうが安全ですか
物価の動きと転職の損得は、直接つながっていません。見るとすれば求人の量と、移る先の賃金水準です。むしろ物価が上がる局面では、昇給が追いつかない会社にとどまるほうが実質の目減りが続きます。



