
求人は1.18倍。
でも正社員は1.00倍。
有効求人倍率で
見る転職の
タイミング
20代は今動くべきか
「今がチャンス」とは言いません。
読み方をお渡しします。
転職で迷っている20代に理由を聞くと、「タイミングが分からない」が必ず出てきます。スキル不足や失敗への不安と並んで、動けない理由の上位に来ます。
タイミングの話が難しいのは、個人の事情と市場の状況が混ざるからです。ただ、市場の側は毎月数字が出ているので、そこだけは確認できます。
この記事では、求人のデータと景気の指標を並べて、いまがどういう局面なのかを整理します。結論を出すのは最後に自分でやってもらう形にします。
目次
いまの求人倍率は3種類ある
ニュースで「有効求人倍率」として出てくる数字は1つですが、同じ資料には3つの倍率が載っています。意味が違うので、並べて見ます。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」2026年8月28日公表。いずれも季節調整値。ハローワークに登録された求人・求職の数から算出したもの。
有効求人倍率1.18倍は、求職者1人に対して求人が1.18件ある状態です。1倍を超えているので、数の上では求人のほうが多い。
新規求人倍率2.10倍は、その月に新しく出た求人と、新しく登録した求職者の比です。有効求人倍率より高く出るのが普通で、市場の動きを先に反映しやすい指標として見られます。
※この数字はハローワークの求人・求職が対象です。転職サービス経由の求人は含まれていないので、市場全体の一部を切り取った指標になります。
正社員で1.00倍が意味すること
3つのなかで20代がいちばん気にするべきなのは、正社員有効求人倍率の1.00倍です。
ちょうど1人に1件。全体の1.18倍との差は0.18ポイントあります。この差が、パートや契約などの求人ぶんです。
つまり、正社員で探すなら競争はほぼ1対1という前提になります。「求人は余っている」という感覚で臨むと、実際の選考の通りにくさとズレます。
一方で、1.00倍を下回っていないのも事実です。求職者のほうが多い状況ではないので、極端に厳しい時期でもありません。
労働力調査で失業の状況も見ておくと、失業者は194万人、そのうち失業期間が3か月未満の人が83万人、1年以上の人が55万人です。短期で決まっている人の層が厚く、長期化している層は限られています。
出典:総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2025年(令和7年)平均結果の要約」。失業者数194万人(前年比1万人減)。
新規求人は減りはじめている
倍率とは別に、求人の実数も見ておきたいところです。
新規求人数は、前年同月比で0.8%の減少でした。新規求人倍率も前月から0.06ポイント下がっています。
減り幅としては小さいので、今すぐ求人がなくなる話ではありません。ただ、増え続ける前提では考えないほうがいい段階に入っています。
ここは判断に効く部分です。求人が増えている局面では、待てば選択肢が増えます。横ばいから減少に入っている局面では、待っても選択肢は増えません。その場合、「準備が整うまで待つ」という方針のコストが上がります。
減っている理由は、この数字からは分かりません。景気の変化か、人手不足の反動か、採用方法が変わっているのか。切り分けるには、別の指標を見る必要があります。
景気の指標はどう見えているか
内閣府が毎月出している景気動向指数を見ます。生産や雇用など複数の指標を合成した数字です。
118.7
前月から1.9ポイント下降。基調判断は「改善」で据え置き。
出典:内閣府経済社会総合研究所「景気動向指数(令和8年8月分速報)」2026年10月7日公表。2020年=100。先行指数118.0、遅行指数112.1。
一致指数は118.7で、前月から1.9ポイント下がりました。6か月ぶりの下降です。
それでも基調判断は「改善」のままです。理由は、内閣府が単月の動きではなく3か月の移動平均で判断しているからで、その平均は8か月連続で上昇しています。
ここは覚えておくと役に立ちます。単月で大きく動いても、それだけでは局面が変わったとは判断されないということです。ニュースで「指数が下降」と出ても、転職の判断を変える材料にはなりません。
先行指数は118.0で、前月から0.4ポイント上昇。2か月連続で上がっています。先行指数は数か月先の動きを示すとされる指標なので、近い将来に急に悪化する兆しは、いまのところ出ていません。
「今動くべきか」を自分で決める手順
市場の状況は以上です。これを自分の事情と組み合わせます。
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1勤続年数が1年未満かどうかを見る
1年未満だと紹介される求人が未経験枠に寄るため、市場がよくても条件は大きく変わりません。この場合は市場の話より、年数を積むほうが効きます。
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2不満が会社の問題か、市場の問題かを分ける
同じ産業・同じ規模の平均と比べて自分の条件が低いなら、会社の問題です。平均どおりなら、産業や規模を変えないと動きません。前者のほうが転職で解決しやすいので、タイミングを待つ必要が薄れます。
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3待つ理由が「準備」なら、期限を切る
新規求人が減りはじめている局面では、準備に半年かけると選択肢が減る可能性があります。準備が必要なら、何を何月までに終えるかを決めてから待ちます。
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4情報収集だけ先に始める
応募と情報収集は分けられます。いまの経験がいくらに評価されるかを聞いておけば、動くべき時期が来たときに判断が速くなります。倍率の数字を見ているより、自分の値段を知るほうが具体的です。
4つのうち、どの局面でも損にならないのは4番です。1番に当たっている人は、むしろ待つほうが有利に働きます。
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公表される倍率は市場の一部です。実際に動いている求人の量は、扱っている側がいちばん詳しく知っています。
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待つ場合に確認しておくこと
待つという判断も十分ありえます。その場合に確認しておきたいことを挙げます。
- いまの会社の昇給率が、市場の賃金の伸びに追いついているか
- 1年後に自分の担当範囲が広がる見込みがあるか
- 待つあいだに取れる経験が、外でも通じる形か
- 求人倍率と新規求人数を、3か月ごとに確認するか
1番目がいちばん重要です。20代の賃金は市場全体で上がっている時期なので、社内の昇給がその速度より遅いと、待つあいだに差が開きます。
3番目も見落とされやすい点です。社内の独自ルールやシステムの運用にだけ詳しくなる1年は、外から見るとほぼ空白に近くなります。待つなら、その期間に何を担当するかまで決めておきたいところです。
4番目の確認は3か月に1回で足ります。毎月追っても数字はほとんど動きませんし、動いたとしても単月の変化では判断を変える材料になりません。
待つことが損になるのは、「時間だけが過ぎて、担当範囲も条件も変わらない」場合です。1年後に何が変わる予定なのかを言葉にできないなら、待つ理由としては弱いことになります。
よくある質問
Q. 有効求人倍率が何倍を超えたら動きどきですか
そういう目安はありません。倍率は市場全体の平均で、自分が応募する職種や地域の状況とは別です。都道府県別で見ても、同じ月に1.69倍の県と0.95倍の府があります。全国の数字で自分の判断を決めるのは無理があります。
Q. 景気が悪くなる前に動いたほうが有利ですか
先行指数は2か月連続で上昇していて、急に悪化する兆しは出ていません。ただ、これは数か月先までの話です。悪化を予想して先回りするより、新規求人数が減りはじめている事実のほうが実務的な材料になります。
Q. ボーナスをもらってから辞めるべきですか
支給日に在籍していることが条件になっている会社が多いので、金額が大きいなら待つ価値があります。就業規則か賃金規程で条件を確認してください。ただ、選考には1〜3か月かかるので、情報収集と応募は先に始めても支給には影響しません。
Q. 年度末や4月入社に合わせたほうが受かりやすいですか
中途採用は欠員が出たタイミングで募集するので、新卒のような山は小さくなります。年度初めに求人が増える傾向はありますが、それを待つあいだに応募できる求人を逃すほうが影響が大きい場合もあります。希望の求人が出た時点が、その人にとってのタイミングです。



