動いた人は、
何から始めたのか。
第二新卒で
転職した3人の
モデルケース
準備したこと、つまずいたこと、
結果どう変わったか。
この記事について:以下の3つのケースは、公的統計(厚生労働省「雇用動向調査」「新規学卒就職者の離職状況」、国税庁「民間給与実態統計調査」)に表れる典型的なパターンをもとに、編集部が組み立てた想定ケースです。実在の個人の体験談ではありません。金額や期間も、統計の水準に沿って設定した目安であり、特定の誰かの実績ではありません。
転職の記事を読んでも、自分に当てはめるとどうなるのかが見えないことがあります。平均値は分かったけれど、実際に何月に何をして、どこで詰まるのか。その流れが分からないと動き出せません。
そこで、よくある3つのパターンを時系列で並べてみました。うまくいった話だけでなく、つまずいた場面も入れています。
目次
ケース1:給与が理由で、同じ職種のまま業界を変えた
Aさん/25歳・男性/卸売業の法人営業・3年目
新卒で入った卸売の会社で、既存顧客向けの営業を担当。仕事は回せるようになっていたが、3年目の昇給が月3,000円だった。手取りに直すとほとんど変わらず、ここで初めて給与の決まり方を調べた。
| 時期 | やったこと |
|---|---|
| 4月 | 就業規則で等級と給与の幅を確認。今の等級の上限に近いと分かる |
| 5月 | 同じ営業職の求人を30件ほど閲覧。業界によって提示額の幅が違うことに気づく |
| 6月 | 職務経歴書を作成。担当社数と年間の取引金額を数字で書き出す |
| 7月 | 在職のまま応募開始。有給を半日単位で使って面接へ |
| 9月 | 内定。1か月の引き継ぎを経て退職 |
つまずいた場面
最初の2社は書類で落ちた。職務経歴書に「既存顧客へのルート営業」としか書いておらず、何社を担当して、どのくらいの規模を動かしていたのかが伝わっていなかった。数字を入れて書き直してから、通過率が変わった。
結果
職種は営業のまま、業界を変えて転職。年収は前職から1割ほど増えた。業種別の平均給与には業界間で大きな差があり、職種を変えずに業界を移ることで水準が変わるのは、統計上もよく見られる動き方になる。
参考:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」表6では、25〜29歳の転職入職者のうち賃金が「増加」した割合は46.3%、そのうち1割以上増えた割合は37.9%。
ケース2:労働条件が理由で、働き方の違う業界へ移った
Bさん/26歳・女性/宿泊業の接客・4年目
シフト制で土日の出勤が多く、繁忙期は連勤が続いた。仕事そのものは嫌いではなかったが、友人と予定が合わない状態が4年続き、このまま30代に入ることを考えて動き出した。
| 時期 | やったこと |
|---|---|
| 1月 | 辞めたい理由を書き出し、休日と勤務時間が中心だと整理する |
| 2月 | 土日休みの求人に絞って検索。事務職の未経験枠が多いと知る |
| 3月 | 転職エージェントに登録し、接客経験の書き方を相談 |
| 4月 | 面接。「接客から事務に移って物足りなくないか」を複数社で聞かれる |
| 6月 | 内定。繁忙期の引き継ぎを終えて退職 |
つまずいた場面
志望動機が「土日休みだから」で止まってしまい、面接で深掘りされると答えに詰まった。接客で毎日どんな判断をしていたかを棚卸しし、「相手の要望を聞き取って先回りする仕事を、腰を据えて続けたい」という形に整理し直してから、面接の手応えが変わった。
結果
年収は前職とほぼ同水準。ただし休日が固定になり、残業も減った。年収が大きく動かないケースでも、働き方を理由にした転職は成立する。統計でも、20代後半の女性が前職を辞めた理由のうち「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」は15.2%で最も多い。
参考:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」表5(転職入職者が前職を辞めた理由別割合)。
ケース3:仕事内容が理由で、未経験の職種に挑戦した
Cさん/24歳・男性/小売業の店舗スタッフ・2年目
希望していた本部の企画職ではなく店舗に配属され、2年が経った。社内公募に応募したが人員が埋まっていて通らず、社外に目を向けた。
| 時期 | やったこと |
|---|---|
| 8月 | 社内公募に応募して不通過。社外の求人を見始める |
| 9月 | 未経験可の職種を調べ、第二新卒枠で応募できる範囲を確認 |
| 10月 | 店舗での売り場づくりの工夫を、数字つきで職務経歴書に落とす |
| 11月 | 面接。「なぜその職種なのか」を全社で深く聞かれる |
| 1月 | 内定。入社時の等級は新卒2年目相当と提示される |
つまずいた場面
未経験の職種に移るため、入社時の年収は前職とほぼ同じ提示だった。一時的に上がらないことに迷ったが、3年目以降の等級の上がり方を選考の中で確認し、納得して受けることにした。
また、志望動機を「やりたかったから」で押し切ろうとして、最初の面接で手応えがなかった。店舗で売り場を考えていた経験と志望職種のつながりを言語化してから、通過するようになった。
結果
未経験の職種へ転職。年収は据え置きだが、担当できる範囲が広がった。年齢が上がるほど未経験の枠は狭くなるため、20代前半のうちに動けたことが選択肢の広さにつながっている。
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3つのケースに共通していたこと
共通点 1
在職中に動いている
3人とも辞めてから探していない。収入が続いている状態で進めたので、納得できない条件を断る余地が残っていた。
共通点 2
辞めたい理由を、一度書き出している
頭の中にあるうちは「なんとなく合わない」のままだった。紙に落として初めて、給与なのか、休日なのか、仕事内容なのかが分かれた。この切り分けが、求人を選ぶ基準になっている。
共通点 3
書類を一度は作り直している
3人とも最初の書類では通らなかった。担当した範囲を数字で書き直す、経験と志望職種のつながりを足す。この手直しを経てから結果が変わっている。
特別なことは何もしていません。順番どおりに手を動かしたかどうかの差です。
逆に、うまくいかなかった進め方
避けたい進め方
限界を感じた日に退職を申し出る。翌月から無職の状態で求人を見始め、3か月以内に決めなければという前提で動くことになる。提示された条件を比べる余裕がなく、最初に内定が出たところに決める。
3人がとった進め方
在職のまま理由を整理し、求人を見て相場を知り、書類を作ってから応募する。合わない求人は断れる。内定が出てから退職を申し出るので、収入が途切れない。
もうひとつ、3つのケースに出てこなかった失敗があります。年収だけで決めることです。提示額が高い求人には理由があります。残業の量、評価の仕組み、担当する範囲。入社前に確認しておかないと、上がったのは額面だけということになりかねません。
自分がどのケースに近いかが分かれば、次にやることは決まります。給与が理由なら相場を調べるところから、労働条件が理由なら条件で絞った検索から、仕事内容が理由なら経験とのつながりを言葉にするところからです。
よくある質問
Q. 3人とも在職中に動いていますが、働きながらだと時間が取れません
まとまった時間は要りません。ケース1のAさんが最初にやったのは、就業規則を開いて等級の幅を確認することだけです。求人を30件眺めるのも、通勤中に少しずつで足ります。時間がかかるのは職務経歴書の作成で、ここは休日に2〜3時間を一度確保すれば形になります。面接の日程調整がいちばんの負担なので、有給が半日単位で取れるかを先に確認しておくと動きやすくなります。
Q. 年収が上がらなかったケース2・3は、転職して良かったのでしょうか
何を解決したかったかによります。Bさんの目的は休日の確保、Cさんの目的は職種を変えることで、どちらも達成しています。年収は転職の目的のひとつであって、全部ではありません。むしろ目的を一つに絞れていたから、提示額を見て迷わずに判断できたとも言えます。
Q. 書類で落ちたときは、どこを直せばいいですか
3人とも最初の書類では通っていません。共通して足りなかったのは、担当した範囲が伝わる情報です。何社を担当したか、どのくらいの規模を動かしていたか、何人のチームだったか。成果の数字でなくて構いません。規模が分かる数字をひとつ入れるだけで、読む側が比較できる材料になります。
Q. 今の職場に迷惑がかかると思うと動けません
3人とも引き継ぎ期間を設けてから退職しています。内定が出てから実際に辞めるまで、1〜2か月あれば通常の引き継ぎは終わります。退職の申し出は、就業規則で定められた期日(多くは1か月前)を守れば問題ありません。繁忙期を避けて時期を選ぶことはできるので、それだけでも受け取られ方は変わります。